【用語集】

1.気剣体一致について述べよ 2.技癖の例について述べよ
3.剣道形を修行する目的を箇条書きに5つ以上記せ 4.「正面打ち」の留意点を箇条書きに4つ以上挙げよ。
5.剣道で礼儀を大切にするのは何故か。 6.間合いについて説明せよ。
7.剣道形修行の必要性・効果 8.切り返しの留意点(切り返し五則)
9.事理一致(技理一致)について述べよ 10.手の内について述べよ
11.気位について述べよ 12.規則第17・20条に定められている中で反則を2回以上行うと相手に一本与える反則は何か。
13.有構無構について述べよ 14.三つの隙について述べよ
15.しかけ技と応じ技について述べよ 16.五つの構えについて各々説明しなさい。
17.間合いについて述べなさい 18.懸待一致について説明しなさい
19.三殺法について説明しなさい 20.鍔ぜりで膠着状態とはどのような状態か述べなさい。
21.守破離について述べなさい 22.三つの先を説明しなさい
23.明鏡止水について説明しなさい 24.目付について述べなさい
25.剣道指導者の心得を箇条書きで5つ以上記しなさい 26.審判員の任務について述べなさい
27.狐疑心について述べなさい 28.無念無想について述べなさい
29.審判規則第17条4号の反則で場外に出るとはどのようなことか 30.切り返しの受け方とその留意点を述べなさい
31.四つの足さばきを説明しなさい 32.剣道で礼儀を大切にするのはなぜか述べなさい
33.残心について説明しなさい 34.気合いについて述べなさい
35.虚実について述べなさい 36.捨て身について述べなさい
37.放心について述べなさい 38.自然体のついて述べなさい
39.防具着用時の心がけを述べなさい 40.主審と副審の任務について述べなさい
41.観見の目付について述べなさい 42.剣道を見学するときの注意点を述べなさい。
43.剣道形練習上の注意点を箇条書きで5つ以上記せ 44.打突の好機について箇条書きで5つ以上答えよ
45.正しい中段の構えにつき『両足、竹刀、両肘、目付け』を簡単に説明せよ 46『着装した防具が、すぐほどけない方法を(三つ以上)記せ』剣道用具着装時の注意点を四つ以上述べよ。
 
47.『正しい中段の構えのうち「両足・竹刀・両肘・目付」の点につき(簡単に箇条書きで)留意事項を記せ』 48.『素振りの方法と効果を各々箇条書きに延べよ』
49.道場の出入りの際の礼法を述べよ 50.残心と引き揚げの違いについて延べよ
51.三つの間合いについて延べよ。 52.試合にのぞむ心構えを述べなさい。
53.稽古の種類を4つ以上記し、各々を簡単に説明せよ。 54.練習中や試合で、大きな発声が必要なわけを記しなさい。
 
55.日本剣道形の太刀2本目を打太刀、仕太刀とも、その留意点を各々2つ以上述べよ。
 
56.一足一刀の間合いを記せ。
 
57.三つの許さぬところについて述べよ。 58.切り返しの効果と留意点を各々箇条書きにて三つ以上記せ。
59.剣道の基本動作が早く上達する心がけを述べよ。 60.反則二回で相手に一本与える反則事項を五つ以上述べよ。


1.気剣体一致について述べよ。

 気剣体一致とは気合、体捌き、竹刀の動きの三つが常に一緒になって打突しなければならないのであって、一つでも欠けると有効打突にはならない。

  • 気とは意志や心の働きを言い、充実した気勢や大きな声を出し気持ちを集中させての決断力を言う。
  • 剣とは刃筋の通った正しい竹刀操作、竹刀の働く作用を指す。
  • 体とは正しい体さばき、体勢のことで正しく踏み込んで打つことを指す。

 相手を打とうと思ってその場で気合いを入れて確実に打ったとしても、踏み込むときの体の体勢が悪ければ有効打突とはならない。また、気合いを掛けて踏み込んで打っても竹刀の働きが悪ければ有効打突にはならない。打つ気がなかったが竹刀を振ったら当たったという場合でも気の働きが欠けているので有効打突にはならない。従って、打突するときには常に気剣体の三つが同時に作用するように心がけなければいけない。
 

2.技癖の例

かぎ足

 かぎ足は剣道の打突に障害があるばかりでなく、膝を痛め腰を悪くする原因になる。これを矯正するには、「左膝で相手を攻める」と思えば足全体が相手の方向を向き、かぎ足は自然に矯正される。

右手打ち
 人間はたいてい右利きであり、剣道も右手で打ちたがるものである。但し、剣道では左手をもと手、右手を副え手というくらい左手で打つのが原則であり、右手打ちは技も決まらず、上達もしない。従って、右手打ちはどうしても矯正しなければならない。その方法として、剣先で打つ気持ちよりも鍔もとで打つようにという教えがある。鍔もとで打とうとすれば踏み込みも大きく、右手の力も抜けて打てるのである。

3.剣道形を修行する目的を箇条書きに5つ以上記せ。

 剣道形は各流派のすぐれた技を集め、剣道の技術の中において最も基本的な打突法を組み立てたものです。礼式、構え、間合い、攻め、打突、気合い、残心など、すべての術技ともいえるもので、次のような目的を達成することが出来る。
 

  1. 正しい礼儀が身に付く。
  2. 正しい姿勢ができ、落ち着いた態度が身に付く。
  3. 眼が明らかになり、相手の動きや気持ちを観察できる。
  4. 足の運びが良くなる。
  5. 悪い癖が直り、太刀筋が正しくなる。
  6. 気合いが錬れて、気魂が充実する。
  7. 動作が機敏、軽快になる。
  8. 適切な間合いを知ることができる。
  9. 打突が確実となる。
  10. 数多く修練することによって、気品や風格ができ、気位が高くなる。

4.「正面打ち」の留意点を箇条書きに4つ以上挙げよ。

 

  1. 振り上げた両腕の下から相手の面が見える程度まで正しく振りかぶる。
  2. 振り上げた竹刀が左右に曲がらないように注意し、振り下ろしるときは体の正中線を通るようにする。
  3. 気合いの入った大きな声と共に打つ。
  4. 打つときに、右足の踏み込みと一致する(一拍子になる)ようにする。
  5. 打った後、左足を残さないように腰を入れて、充分に引き付け、腰から相手に体当たりするような気持ちで打ち込む。
  6. 面を打ったときの右腕は方の高さになるように止める。
  7. 打ったときの両手は、肘を伸ばしてしっかり絞り込む。
  8. 竹刀の弦の反対側で、竹刀の刃部3分の1より先で打つ。

5.剣道で礼儀を大切にするのは何故か。

 剣道のような対人関係の武道は、打突するたびごとに非常に刺激が強く、ややもすると原始的な闘争本能のみの単なる打ち合いに陥りやすい。そのために礼儀によって人間的に統率し相手の人格を尊重することが大切になるのである。また、自分の弱点を打突してくれたとき、自己の力の不十分さ、技術の足らないところを深く反省して、相手が自分を直接教えてくれたという感謝の気持ちをもつことが重要で、そのために相手に対する礼儀を大切にしなければならないのである。

6.間合いについて説明せよ。
 
「一足一刀の間合い」とは「常の間」と言い、一足踏み込めば相手を打突できる距離で、ふつう両者の剣先がわずかに交差する程度である。この間合いから近くなったのを「近間」、遠くなったのを「遠間」と言う。
 相手を打つために「一足一刀の間」になることを、「打ち間に入る」、「自分の間に入る」などという。また、距離的にも技術的にも相手と絶縁して相手が打ってこれない状態を作るこことを「間合いを切る」と言う。

7.剣道形修行の必要性・効果

 必要性:剣道形は各流派のすぐれた技を集め、剣道の技術の中において最も基本的な打突法を組み立てたものです。礼式、構え、間合い、攻め、打突、気合い、残心など、すべての術技ともいえるもので、極めて高度なものであるので、初心者はもちろんのこと、上級者も常に形の稽古によって正しい剣道を修得することが必要です。

<効果>

  1. 正しい礼儀が身に付く。
  2. 正しい姿勢ができ、落ち着いた態度が身に付く。
  3. 眼が明らかになり、相手の動きや気持ちを観察できる。
  4. 足の運びが良くなる。
  5. 悪い癖が直り、太刀筋が正しくなる。
  6. 気合いが錬れて、気魂が充実する。
  7. 自分の動作が機敏、軽快になる。
  8. 適切な間合いを知ることができる。
  9. 打突が確実となる。
  10. 数多く修練することによって、気品や風格ができ、気位が高くなる。

などの剣道の基本となる手足の捌き、気合い、呼吸、打突の機会等を修得することが出来るので剣道の稽古の際には剣道形も合わせて修行するよう努めなくてはならない。

8.切り返しの留意点(切り返し五則) 

  1. 大きく正しく。背中まで振りかぶって相手の中心に対して45度の角度に打つ。
  2. 間合いを正しくとる。元立ちに対して間合いが近くならないようにする。
  3. 左手は常に体の中心にとり右手は伸ばす。左手が中心から外れることは右手で打つことになる。
  4. 体で調子をとってはいけない。体を曲げのばしして打つことはいけない。
  5. 太刀の返りを利用して打つこと。打った返りと冴えを利用して打つこと。

そこに「打ち返し」の意義がある。

9.理事一致について

 理は理合いであり事は技である。剣道を学ぶとき、理合にかたよってはいけないし、技ばかりに片寄ってもよくない。理合と技とを一元的に修練するのが理事一致である。 

10.手の内について述べよ

手の内(てのうち)とは、竹刀の握りと教える場合がありますが、竹刀を操作する掌中の作用であり、両手首・両手の指を最も効率的に使う動きのことをいいます。手の裡(てのうち)とも書きます。
具体的には

  1. 柄を持つ左右の手の持ち方。
  2. 左右の手の力の入れ方。
  3. 打突の際の両手の力の緊張状態とその釣り合い。
  4. 打突後の力のゆるめ方。

これらを総合的に手の内とも言います。 

11.気位について述べよ

気位(きぐらい)とは、長い年月をかけて修練や鍛錬を続けたことによって、技を充分に修得しさらに精神的にも鍛えられたその人からにじみ出る侵しがたい気品を言います。

12.規則第17・20条に定められている中で反則を2回以上行うと相手に一本与える反則は何か。

第17条の1.定められた以外の用具(不正用具)を使用する。
第17条の2.相手に足をかけまたは払う。
第17条の3.相手を不当に場外に出す。
第17条の4.試合中に場外に出る。

 細則第15条…場外とは

  1. 片足が、完全に境界線外に出た場合。
  2. 倒れたとき、身体の一部が境界線外に出た場合。
  3. 境界線外において、身体の一部または竹刀で身体を支えた場合。

第17条の5.自己の竹刀を落とす。
第17条の6.不当な中止要請をする。
第17条の7.その他、この規則に反する行為をする。
 細則第16条…禁止行為とは

  1. 相手にてをかけまたは抱えこむ。
  2. 相手の竹刀を握るまたは自分の竹刀の刃部を握る。
  3. 相手の竹刀を抱える。
  4. 相手の肩に故意に竹刀をかける。
  5. 倒れたとき、相手の攻撃に対応することなく、うつ伏せなどになる。
  6. 故意に時間の空費をする。
  7. 不当なつば(鍔)競り合いおよび打突をする。

第20条  試合者が第17条2号ないし7号の行為をした場合は、反則とし、2回犯した場合は、相手に1本を与える。反則は1試合を通じて積算する。ただし、同時反則によって両者が負けになる場合は相殺し、反則としない。
解答は赤で書かれているものが反則2回で相手に1本与える反則です。

13.有構無構について述べよ

有構無構(ゆうこうむこう)とは、 基本的な構えは中段や上段がありますが、自分の構えにこだわったり、相手の構えを考えすぎたり用心をしすぎたりすると、自由な動きができなるものです。構えはあってないのと同じで、最終的には勝敗というものは心の闘いが左右するので、構えにこだわらずに、心の内の構えが大切であるという意味です。

14.三つの隙について述べよ

相手が油断したり剣道で言う四戒などの気持ちを持ったときの「心の隙」、この隙が現れないように不動心・平常心でを養うことが大切です。 相手の技の起こり頭や技の尽きたときなどの「技の隙」、打とうとうところや出るところ、退くところなどで隙が生じないように気を持って攻め隙を作らないようにすることが大切です。・技を出したり、打突に失敗したときなどに体勢が崩れ、充分な残心がとれないようになった「身体の隙」を三つの隙と言います。

15.しかけ技と応じ技について述べよ


しかけ技とは相手が打突の動作を起こす前にこちらから相手の中心を攻めたり、竹刀で押さえて隙をつくらせ、または、相手の隙を発見すると同時に打ち込んでゆく技です。また、応じ技とは相手の仕掛けてくる技を、「すりあげる」「返す」「抜く」「打ち落とす」などをして、相手の攻撃を無効にして同時にうまれた隙を打ち込む技のことです

16.五つの構えについて各々説明しなさい。

構えには次の中段・下段・上段・脇・八相の構えがあり、「五行の構え」といいます。

中段の構え
「常の構え」「正眼の構え」といわれるように、攻防に最も都合がよく、理想的な構えです。剣先を相手の中心に付け、自然体の姿勢から右足を前に出し、左足をへその前に置き、握り拳ひとつぐらい出すようにします。
下段の構え
「守りの構え」といわれますが、八方の敵に応じることのできる構えといわれます。相手に隙があれば直ちに攻撃に転ずることが可能な構えでなくてはなりません。中段の構えから竹刀を下げ剣先を延長線が相手の両膝の中間に付けるようにします。
上段の構え
「火の構え」といわれる最も攻撃的な構えです。相手の技の起こり頭を一刀で制する気持ちで構えます。中段の構えから竹刀を頭上に上げ両腕が顔の前で三角形を作るようにします。左上段、右上段ともに双手と片手がある。 
脇構え
「陽の構え」といわれ、相手の出方に応じて竹刀を長くも、短くも使い分けることができる構えです。中段の構えから右足を一歩引き、手元を右脇に引き寄せ竹刀の先を水平よりやや下げ、剣先を身体にかくして相手から見えないようにし、竹刀の長さを知られないようにします。
八相の構え
「陰の構え」といわれ、自ら攻撃を仕掛けるのではなく、相手の出方によって攻撃に変わる構えです。中段の構えから左足を一歩踏み出すとともに左拳を右乳頭部の前に、右拳を口元の高さにします。 抜いた刀と鞘が八の字をなすから八相という。また、瞬時に八方の敵に対応できるから発早とかく流派もある。

17.間合いについて述べなさい

間と間合いは同じ意味で使う場合もありますが、厳密に区別すれば次の通りです。「間」とは時間的な距離をさし、「間拍子」や「拍子の間」などに使われている。「間合い」とは空間的な距離で相手と自分との距離をさします。「我より近く、相手より遠い」と言われるのが間合いです。しかし、間合いを略して間ということがあります。一般に言う間合いとは、相手との距離をさし、剣先がふれあう程度(竹刀が10センチ程度交わった)の間合いを一足一刀の間合いといい、1歩踏み込めば相手を打突できる距離です。それより近くなった間合いを近間、遠くなった間合いを遠間といいます。

18.懸待一致について説明しなさい

懸待一致とは、攻める(懸かる)ことばかりに専念しても、備える(待つ)ことばかりに専念しても隙が生じてしまいます。だから、旺盛な気力とともに、懸かるところに待つ心、待つところに懸かる心がなければならないという教えを表現した言葉です。「懸中待(けんちゅうたい)」「待中懸」ともいいます。簡単に言えば「攻防一致」といってもいいでしょう。

19.三殺法について説明しなさい

三殺法とは、相手の「気を殺す」、「竹刀・太刀を殺す」、「技を殺す」ことをいいます。気を殺すとは、充実した気力を持って相手の気を崩して攻めることをいいます。竹刀を殺すとは、相手の竹刀を抑えたり払ったり、叩いたりして竹刀の自由に使わせないことをいいます。技を殺すとは、相手の打ちに対して先を取って乗ったりはじいたりして、相手に攻撃の機会を与えないことをいいます。千葉周作はこれを「三つの挫き」と表現しています。

20.鍔ぜりで膠着状態とはどのような状態か述べなさい。

つば競り合いに入った場合で、適正に行われていて、技を出そうとして競り合っているが、双方どうにも技を出せない状態を膠着という。

21.守破離について述べなさい

守破離とは、修練の過程を示した言葉です。守とは、師の教えを守りながらひたすら基本を身につけることをいいます。破とは今までの教えを基礎として自分の個性を活かし、自分自身のものを創造する段階です。離とは最初の守の段階の教えから外れるのではなく、破の段階で身につけたものを中核として、自由自在に行動しながらいままでの教えを乗り越える段階をいいます。 
22.三つの先を説明しなさい

打つ機会である先(せん)には次の三つの先があります。
 

  • 先の先(先々の先)とは相手の思惑を素早く察知して、相手が動作を起こす前に打つことをいう。
  • 対の先(先・先前の先)とは相手の思惑までは察知できないが、打突してくる起こり頭をとらえたり、相手の技が功を奏する前に、すり上げたり返したりして勝ちを制することを言います。
  • 後の先(待の先・先後の先)とは相手に「先」を仕掛けられて、それに応じる場合をいいます。相手の打ってくる技をかわしたり、打ち落としたりして相手の気持ちの萎えたところや、体の崩れたところを打つことをいいます

23.明鏡止水について説明しなさい

明鏡止水とは、自分の心から四戒などの邪念をとりはい、心が明らかな鏡のように澄み切っていれば、静まりかえった水面が月を写すように、相手の隙が自然に自分の心に映るということです。

24.目付について述べなさい

@「目は心の鏡」といわれるように目を見ればその人の心の状態がわかります。また、目を見ることによって相手の身体全体が見えるものです。そのため、剣道をするときは相手の目を見て、その心の中を探り、また、相手の目を見つつも、身体全体を視野に入れて物理的な相手の動きを捕らえます。
このような教えを「観見の目付(かんけんのめつけ)」といい、 観とは洞察力をいい、見とは物理的に動きを捕らえる目をいいます。「観の目強く、見の目弱く」という教えもあり、相手を見るのに「目で見るより心で見よ」という意味です。宮本武蔵は「観の目強く、見の目弱し」と言って、相手の心を読むことが重要であると説いています。
さらに発展させて説明すれば、
「一眼二足三胆四力(いちがんにそくさんたんしりき)」ということばもあります。「眼」は洞察力、「足」は迅速な足さばき、「胆」は度胸、「力」は単に物理的な力ではなく、一、二、三、の要素を含む力をいい、修行の重要度を教えた言葉もあります。

A目付とは、剣道では「一眼二足三胆四力(いちがんにそくさんたんしりき)」ということばがあるように、「眼」は単に物理的に見るだけでなく洞察力の意味もあります。目付を説明する「遠山の目付」・「観見の目付」という言葉があるます。
遠山の目付(えんざんのめつけ)とは、相手と対峙したときに、相手の竹刀や打突部など一ヵ所だけを見つめたりしないで、遠い山を望むように、相手の顔を中心に体全体をおおらかに見なさいという教えです。
観見の目付(かんけんのめつけ)とは、「観」は洞察力をいい、「見」は物理的に動きを捕らえる目をいいます。両者とも相手の目を見ることが大切とされています。「目は心の鏡」といわれるように目を見ればその人の心の状態がわかります。また、目を見ることによって相手の身体全体が見えるものです。「観の目強く、見の目弱く」という教えもあります。相手を見るのに「目で見るより心で見よ」という意味です。宮本武蔵は「観の目強く、見の目弱し」と言っています。

25.剣道指導者の心得を箇条書きで5つ以上記しなさい

 

  1. 確固たる信念と情熱の持ち主であること。
  2. 愛情を持って誠心誠意指導にあたること。
  3. 教えることに喜びを持つこと。
  4. 人格を養い、技能の向上に努力すること。
  5. 能率的・合理的な指導法の研究を常に心掛けること。
  6. 指導を受ける者とともに修練すること。
  7. 審判技術に熟達すること。
  8. 自分の教えをうまく表現する能力を養うこと。
  9. 指導を受ける者の持つ個々の優れた才能を見つけることのできる指導者としての目を養うこと。
  10. 指導のし過ぎにならぬよう留意すること。


26.審判員の任務について述べなさい
 

  1. 当該試合を運営する。
  2. 主審は、当該試合運営の全般に関する権限を有し、審判旗を持って有効打突および反則などの表示と宣告を行う。
  3. 副審は、旗を持って有効打突および反則などの表示を行い、運営上主審を補佐する。なお、緊急の時は、試合中止の表示と宣告をすることができる。


27.狐疑心について述べなさい

狐疑心(こぎしん)とは、狐は疑い深い動物で、狩人に追われたときに逃げ場に困り道に迷っている間に脇に回られて狩人に撃たれてしまうことがあります。このことから、狐のように疑い深く進退の決心がつかないことをいい、剣道における戒めのひとつです。

28.無念無想について述べなさい

無念無想(むねんむそう)とは、簡単に言えば、よけいな事を何も考えない心の状態をいいます。剣道では、四戒または四病ともいう驚(きょう)・懼(く)・疑(ぎ)・惑(わく)といった心の混乱や、自分の気持ちが一時的に止まって瞬間的動作のできない心が居着く状態、狐疑心といった疑い深く進退の決心がつかない心、勝敗や自分の利己的な考え、これらの自由な心、体の動きを阻害するこまった状態から解放された、まさに明鏡止水の心境をさす言葉です。

29.審判規則第17条4号の反則で場外に出るとはどのようなことか

細則第15条にあるように、場外とは

  1. 片足が、完全に境界線外に出た場合。
  2. 倒れたとき、身体の一部が境界線外に出た場合。
  3. 境界線外において、身体の一部または竹刀で身体を支えた場合。

30.切り返しの受け方とその留意点を述べなさい

受け方は

相互に中段の構えから、機を見て剣先を右に開いて正面を打たせる。ただちに連続左右面を後退または前進しながら打たせ、打ち終わったら双方が中段の構えになるように間合いを充分にとって、直ちに剣先を開いて正面を打たせる。この「正面→連続左右面→正面」の動作を数回繰り返す。初心者に対しては面打ちを引き込むように受け、技量の上達したものには打ちを落とすように受けるなどする。連続の左右面を受けるときは「歩み足」で受ける。竹刀を垂直にし左拳をほぼ腰の高さ、右拳をほぼ乳の高さにして、両拳が上がりすぎないように注意する。

留意点では、次のような切り返し五則という教えがあり、それを守って行います。

  • 大きく正しく、常に刃筋を正しく打つ。
  • 正しい間合いを守りながら前進後退をする。
  • 左手の拳は常に体の中心にあって、面を打ったときには右手はきちっと伸ばす。
  • 体で調子をとって打つのではなく、気剣体を一致させて打つ。
  • 太刀の返りを利用して打つ。

31.四つの足さばきを説明しなさい

 

  • 歩み足(あゆみあし)とは、日常生活で行う歩行と同じ要領で交互に足を前に出す足運びで、相手との距離があり、送り足では間をつめるのに時間がかかる時に用います。
  • 送り足(おくりあし)とは、最も基本的な足運びで、基本の構えをしたときの右足が前で左足が後ろの形です。進行する方向の足から移動を開始して、ついで他方の足を移動した足に引きつける動きです。
  • 開き足(ひらきあし)とは、相手の打突を、身体を左右にさばいてかわすのに用います。左に捌いたときは左足が前になります。剣道形の4本目、仕太刀の動きです。
  • 継ぎ足(つぎあし)とは、後ろ足を前足に引きつけ、前足から前進する足運びで、相手との距離が遠くて打突が届かないとき、間を盗んで大きく踏み出すために用います。

32.剣道で礼儀を大切にするのはなぜか述べなさい

剣道は、「礼に始まって礼に終わる」と言われているように、特に礼儀作法を重んじ、厳格に行われてきました。剣道は対人的格闘技であるので、ややもすると原始的、闘争的本能を発揮しやすくなる傾向があります。この本能を礼儀によって人間的に統制したり制御するところに礼の意義があります。
また、人の心は形にあらわれるもので、常に相手の人格を尊重しつつ、お互いに心を練り、体を鍛え、技をみがくためのよき協力者として、感謝の心を持って礼儀作法を正しくすることが、相互によい剣道を形成していく上に大切なことです。

33.残心について説明しなさい

残心とは、相手を打突した後も気持ちをゆるめることなく、少しも油断もなく、その後の変化に直ちに応じられるような心構えをいいます。一般的には打突の後に中段の構えにもっどて相手に正対することになります。自分の打突が有効打突にならなくとも、気を緩めず残心をとって相手の反撃に応じることができなければなりません。また、試合では、有効打とつと審判が判定しても、残心がなければ合議の上、取り消すことができる試合規則になっています。いずれにしても剣道において残心はなくてはならない大切な心と体勢です。

34.気合いについて述べなさい

気合いとは、有効打突の条件である気剣体一致の重要な要素です。打つときの気合いはもちろん大きい発声で自分の気持ちを表します。また、相手と対峙して竹刀を交え、これから攻撃するという、精神を集中し万全の注意をはらった状態で、心の底からにじみ出てくる気持ちも、気合いといい、発声がない場合もあります。初心のうちは大きい声で自分の気合いを表現することがいいでしょう。高段者になるいつれて、無声の気合いもでるようになります。

35.虚実について述べなさい

虚実(きょじつ)の虚とは相手の守りの弱い状態(守りの薄い)のところ、実とは強いと状態(十分守っている)のところをいいます。実を避けて虚を打てという教えです。相手の虚実はこちらからの攻め方(誘い方)によっても変化します。その虚実の変わり目を打つことが大切です。

36.捨て身について述べなさい

捨て身とは、身を捨てたときこそ、はじめて浮かび上がってくる機会があり、相手の隙を見るやいなや、躊躇することなく身を捨てて打ち込んでいくことにより、勝ちを得ることができます。この時に、自分が打たれるなどという、弱い気持ちが起きてはいけません。

37.放心について述べなさい

放心とは、ふつう「放心」というと、心がぼーっとしてまとまりのない状態をいいますが、剣道でいう「放心」とは、どんなことにも対処できるように、心をとき放ち、何ものにもとらわれない心をいいます。明鏡止水や無念無想のこころと同じような心です。

38.自然体のついて述べなさい

自然体とは、剣道の「構え」のもととなる体勢で、どこにも無理のない自然で安定感のある姿勢のことを言います。この姿勢はいかなる身体の移動にも、また相手の動作に対しても敏捷でしかも正確に、かつ自由に対処できるような良い姿勢です。この姿勢は剣道に限らず一般的にも良い姿勢と言われます。

39.防具着用時の心がけ(留意点)を述べなさい

・垂
垂紐を中央の大垂の下で花結びにする。充分に力を入れてきつく結ぶこと。
・胴
胴の下端が垂帯の半分幅ほど隠れるようにつける。左右の紐の長さを同じにして胴が水平になるようにする。次に、胴の下部の胴紐を忘れずに花結びにすること。
・手拭い
面を着ける前に、まず手拭いをかぶる。手拭いは途中ではずれないようにしっかりとかぶること。
・面
顎を安定させるように顔をいれ、面紐を引き締めて面が頭部や顔の部分にしっかりと密着するように着ける。左右の則頭の面紐は2本ずつそれぞれ平行にそろえる。結び終わったら紐の長さをそろえる。(長さは結び目から40センチ以内にする。長い場合はあらかじめ切って、紐の端を処理しておく)耳の付近の面布団を開き、耳と面布団が密着しないようにする。これは鼓膜の損傷を防止するためである。
稽古中に紐がほどけないようにきちっと結ぶ習慣を付けましょう。
・小手
左小手、次に右小手の順で小手を着ける。小手紐は適度に締めて、あまりきつくならないようにすること。また、小手紐が長くたれないように注意する。

40.主審と副審の任務について述べなさい

26.参照

41.観見の目付について述べなさい

観見の目付(かんけんのめつけ)の、観とは洞察力をいい、見とは物理的に動きを捕らえる目をいいます。両者とも相手の目を見ることが大切とされています。「目は心の鏡」といわれるように目を見ればその人の心の状態がわかります。また、目を見ることによって相手の身体全体が見えるものです。「観の目強く、見の目弱く」という教えもあります。相手を見るのに「目で見るより心で見よ」という意味です。宮本武蔵は「観の目強く、見の目弱し」と言っています。

42.剣道を見学するときの注意点を述べなさい。

剣道を見学することによって上達の手助けにすることから、見取り稽古といいます。 これは、ばくぜんと見学するのではなく、他人の稽古や練習態度、得意技などを研究しながら、よい点は取り入れ自分の剣道に役立てて行くように見学することを言います。特に、自分がいつも注意を受けているところや、自分の不得意な技を他の人がどのように行っているかなど、気持ちを集中して見学しなければいけません。そして、自分の剣道を反省する材料にするのです。また、自分が防具を付けて稽古をしているときでも、常に見取り稽古を心掛けなければいけません。

43.剣道形練習上の注意点を箇条書きで5つ以上記せ。

1.形は約束に従い、一定された形式と順序によって練習するものであるが精神的には形にとらわれることなく、何れにも変化できるだけの心身の余裕を持つ。
2.打太刀は約束に従って気合を充実して仕太刀を破る気魄で打ち込む。仕太刀はどこから打ち込まれても臨機応変の処置ができる体勢を整えて初めて約束に従うことができるのである。
3.形の実施中は、始めの座礼から終わりの座礼まで、構えをといて後退するときでも気をゆるめずに、終始充実した気魄で練習する。
4.打太刀は師の位であり、客位に合って打突動作の相手となり、仕太刀の動作を完全に表示させる。
5.仕太刀は門人の位であり、主位にあって、打太刀に動作を行わせ、それによって自分の動作を完全に表示する。
6.通常打太刀に上位の者があたり、あくまでも打太刀が仕太刀をリードして双方の呼吸が合い、十分な気合の充実が肝要であり、心技ともに打太刀から始動し、仕太刀は常に打太刀に従って行動する.
7.形の練習にはまず形の技術に熟練するとともに形の理合いも理解しなければならない。
(補足) 打太刀、仕太刀の位置は、これまで正面に向かって左が打太刀、右が仕太刀とされていたが、論拠が不明白で地区的には、まちまちであった。
そこで昭和42年9月、日本武道館で行われた全日本剣道連盟の講習会に当り講師が協議した結果、これが従来とは逆になり正面に向かって右が上席、すなはち打太刀とし、左を次席、すなはち仕太刀と改めることを申し合わせ伝達された。その理由は宮内庁の礼法により、正面に向かって右が上席で左が次席であることが明確にされたことによる。

44.打突の好機について箇条書きで5つ以上答えよ。


打突すべき次のような機会を指します。
1)起こり頭:出頭、出鼻ともいい動作を起こそうとする瞬間。
2)受け止めたところ:相手が自分の打突を受け止めた瞬間。
3)居着いたところ:心身の活動がにぶり、動きが一時停滞した瞬間。
4)退くところ:相手が攻めに屈して退こうとした瞬間。
5)技の尽きたところ:相手の技が一時中断し、体勢を整えようとする瞬間。
特に1)2)3)を 「三つの許さぬ所」といいます

45.正しい中段の構えにつき『両足、竹刀、両肘、目付け』の点を簡単に説明せよ。

両足について…右足を半歩前に出し、両足のつま先は前方に向けて、左右の開きはおよそ握り拳の幅くらいにする。前後の開きは右足のかかとの線に沿って左足のつま先を置くようにする。また、左足のかかとをわずかに浮かせて体重を両足に等しくかけ、両膝はまげず伸ばさずの状態に自然に保つようにする。
竹刀…剣先の高さは、およそ自分ののどのの高さにする。しかし、相手がいる場合は、相手ののどの高さで、剣先の延長線が相手の両眼の間たは左目の方向を向くようにする。
両肘…両肘は張り過ぎず、すぼめ過ぎず、伸ばし過ぎずの状態で、肩の力を抜き、自然に体側につけ、ゆとりを持って構える。
目付…相手の目を中心に、全体を見るようにする。
竹刀の持ち方…左こぶしの位置はへその高さで、拳一握り分からだから離す。左手の小指を柄頭いっぱいにかけて上から握り、小指、薬指、中指を締め、人指し指と親指を軽く添える。右手も同様に上から軽く握り、右こぶしは鍔よりわずかに離れるようにして持つ。

46.『着装した防具が、すぐほどけない方法を(三つ以上)記せ』

1.面を着けるときは、あご、ひたいの順に合わせて十分に密着させるようにる。面ひもは面金に付けてあるところから順に締めていき、後頭部で結ぶときにゆるまないように注意してしっかりと結ぶ。
2.面ひもの長さは結び目から40センチになるように切って調整する。
3.結び目がたて結びだとほどけやすいので横結びにする。
4.胴ひもの長い方(上紐)を乳革に結んだ後、ゆるまないようにひもを十分に引っ張っておく。
5.胴の下ひも(胴の後ろで結ぶ短いほう)はたて結びにするとほどけやすいので横結びにする。結んだ後、両方に引っ張っておく。
6.垂れを付けるときは、腹を少しへこませた状態できつく締めて、横結びにする。
7.小手ひもはかた結びにし、つねにほどけていないか点検をする。
8.すべてにおいて、稽古の途中でゆるんでいないかを点検する習慣を付ける。

47.『正しい中段の構えのうち「両足・竹刀・両肘・目付」の点につき(簡単に箇条書きで)留意事項を記せ』

1.両足…両足のつま先は前方を向き、左右の開きは約ひと握り、前後の開きは右足のかかとの線に沿って左足のつま先を置くようにする。また、左足のかかとをわずかに浮かせて体重を両足に等しくかけ、両膝はまげず伸ばさずの状態に自然に保つようにする。
2.竹刀…剣先の高さは、およそ自分ののどの高さであるが、相手がいる場合は、相手ののどの高さにし、その延長が相手の両眼の間または左目の方向を向くようにする。
3.両肘…張り過ぎず、すぼめ過ぎず、伸ばし過ぎずの状態で、肩の力を抜き、自然に体側につけ、ゆとりを持って構える。
4.目付(見るところ)…遠山の目付といって、心の窓といわれる相手の目を中心に見ながらも、相手の全身を見るようにする。
5.(おまけ)竹刀の持ち方…竹刀の持ち方は、左手の小指を柄頭いっぱいにかけて上から握り、小指、薬指、中指を締め、人指し指と親指を軽く添え、左こぶしは臍前より約ひと握り前に絞り下げる。右手も同様に上から軽く握り、右こぶしは鍔よりわずかに離れるようにして持つ。

48.『素振りの方法と効果を各々箇条書きに延べよ』

方法…素振りの種類は、正面打ち素振り、左右面素振り、上下振り、斜め振り、空間打突などがある。いづれも前後や左右の足さばきを同時に行う。

1.正面打ち素振り
・中段の構えから「手の内」を変えないようにして竹刀をできるだけ大きく振りかぶる。
・竹刀の物打ちが自分の面の高さになるように止める。
・その時の両肘は絞り込むようにして伸ばし、右腕は肩の高さ、左こぶしはみぞおちの高さで十分に手の内をしぼって止める。
・その後、そのまま振りかぶり同様に続ける。

2.左右面素振り
・正面の素振りと要領は同じだが、打つ場所が相手の面の左右45度の角度になるように正しく打つ。
・振り下ろしたとき、左のこぶしが自分の中心からはずれないように注意する。
・振り下ろした後、自分の頭上で竹刀を回すようにして反対側の斜め45度に振り下ろす。
・これを同様に続ける。

3.跳躍素振り
・正面の素振りと要領は同じだが、振りかぶるときに後ろに飛び下がり、打つときに前に踏み込む。
・下がったときも前に出たときも、常に足は正しい正しい位置で止める。
・特に、左のつま先が右足のかかとより前に出ないように注意する。

4.上下振り
・中段の構えから「手の内」を変えないようにして竹刀をできるだけ大きく振りかぶる。
・止めることなく両腕を伸ばし、左こぶしを下腹部の前まで引きつけて充分に振り下ろす。
・両こぶしは内側に絞るようにし、振りおろした時の剣先の位置は仮想の相手の膝頭の高さぐらいにする。
・この動作を繰り返して行う。

5.斜め振り
・中段の構えから大きく振りかぶり、竹刀は右斜め上から45度ぐらいの角度をもって左膝頭の高さぐらいまで振りおろす。
・さらに大きく振りかぶって頭上で返し左斜め上から前と同じ要領で右膝頭の高さぐらいまで振りおろす。
・この動作を繰り返して行う。

6.空間打突
・素振りの応用動作で、相手(目標)を空間に仮想して、面、小手、胴,突などの打突の稽古をする方法であり、空間打突の正面打ちに跳躍をつけて行う方法を跳躍素振りという。

効果
1.手、足、体の一致を修練することができる。
2.初心者は、素振りによって竹刀の操作を覚えることができる。
3.打突に必要な手の内を覚え、打ちの冴えを身につけることができる。
4.足さばきと竹刀の振りの調和を身につけることができる。
5.稽古の前に行うと準備運動としてもよい効果的が期待できる。

49.道場の出入りの際の礼法を述べよ。
昔から道場の出入りには必ず礼をするしきたりがある。それはその人の心構えを示すものである。入るときは「神に恥じない心で修行します」という誓いの礼で、帰るときは「ありがとうございました」という感謝の礼である。具体的な方法は、道場の出入り口に立ち、神前(神棚がない場所では上席にあたる方向)に注目して、姿勢を正し、頭を下げる。その時は、首を曲げずに、腰から体を折るようにする。その角度はおおむね30°にする。すぐに戻さずに、一呼吸ぐらい頭をさげ、静かにもとの姿勢に戻すとよい。

50.残心と引き揚げの違いについて延べよ。
残心とは相手を打突した後でも心をゆるめることなく相手に心構えや身構えを示して、相手の動作にすぐに対応できる心や体の用意をすることをいう。これに反して引き揚げとは、打突後に相手に対する心の用心がなく、相手に対する身構えがなく、油断したり相手に背中を見せて逃げるような態度を取ることを言う。試合規則では、この引き揚げを戒めるために、有効打突の宣告があった後でも、合議の上、取り消すことができると規定されている。

51.三つの間合いについて延べよ。
1.一足一刀の間合い…一歩踏み込めば相手を打突できる間合いである。一歩さがれば相手の攻撃をはずすことのできる距離で、打ち間ともいい、剣道の基本的な間合いである。
2.遠間…一足一刀の間合いより遠い間合いを言う。この間合いは相手が一歩踏み込んで打突しても有効な打突には成りがたい安全な間合いで、試合や上位の者に対しては、この間合いをとり、相手の隙を見て一足一刀の間合いに進んで打突するのである。
3.近間…一足一刀の間合いより近い間合いである。そのまま一歩踏み込んで打っても元打ちとなり、一歩退けばすかさず相手から打突される危険な間合いである。

52.試合にのぞむ心構えを述べなさい
1.当日には普段の心身の疲れを完全に回復させ体調を最高の状態に整える。
2.睡眠を十分にとり、精神の安定をはかる。
3.普段から暴飲暴食などは慎む。
4.当日の朝は、余裕を持て準備し試合までゆったりとした気持ちを保つ。
5.防具や竹刀の手入れを十分行い、万全の体制で試合にのぞむ。

53.稽古の種類を4つ以上記し、各々を簡単に説明せよ。

掛かり稽古(かかりけいこ) 
相手から打たれたり、いなされたり、応じられたりすることにとらわれずに、自分の思いのまま十分な気力と体力をもって、いろいろな技を身を捨てて強く激しく打ち懸かる稽古です。元立ちはよい打ちは打たせて、無理な打ちや悪い打ちは返したり抜いたりして打たせず、正しい打ちと気力を身につけさすようにしましょう。掛かり稽古では次のような効果があります。敏捷性・持久力が養われる。手の内、手の返しがよくなる。正しい間合いを知る。打つべき機会を知る。

見取り稽古(みとりけいこ) 
漠然と見学するのではなく、他人の稽古や練習態度、得意技などを研究しながら、よい点は取り入れ自分の剣道に役立てて行くように見学することを言います。自分が防具を付けて稽古をしているときでも、常に見取り稽古を心掛けなければいけません。

地稽古(じげいこ) 
お互いに気力を充実させて修得した技を積極的に出し、錬磨しあう総合的な稽古法です。

打ち込み稽古 
あらかじめ打ち込む部位を決めておいて、元立ちの作ってくれた隙を打ち込む基本的な稽古法です。

54.練習中や試合で、大きな発声が必要なわけを記しなさい。

剣道におけるかけ声は、次のような効果があります。
  大きな声を出すことにより、自らを励まし、気勢を増し、恐怖の心をなくし、攻勢に出られる。相手に驚きや恐れを与える。無心になることができる。心気力の一致をはかれる。打突の瞬間に声を出すことによって速く、強く冴えた打ちになる。
このような効果を得るために、初心のうちはできるだけ大きな発声をすることが必要です。

55.日本剣道形の太刀2本目を打太刀、仕太刀とも、その留意点を各々2つ以上述べよ。

打太刀 
1 間合に接したとき、機を見て仕太刀の右小手を打つっていく。
2 振りかぶったときに、剣先が下がらないようにする。
3 大技で仕太刀の右小手の位置よりわずかに低い位置まで打ってゆく。

仕太刀
1 左斜め後ろに引くとき、打太刀の刀の下で半円をえがく心持ちで打太刀の打ち込んでくるのを抜く。
2 打太刀の刀を抜く動作と打つ動作が一拍子になるようにする。
3 振りかぶりは、打太刀の見える程度まで振りかぶり、斜め打ちにならないように打つ。
4 打った後は、形に表さない残心なので十分な気位をしめす。

56.一足一刀の間合いを記せ。

 一般には剣先が触れるか触れないかという間合い。一歩踏み込めば相手に打突を与え、一歩さがれば相手の打突をかわすことのできる間合い。これより近いと近間、遠いと遠間という。これは個人の体力・体型・筋力・剣道の習熟度によって一概に規定はできないが、稽古を重ねる中でこの間合いをつかむことが大切である。

57.三つの許さぬところについて述べよ。

次のような三つの隙は自分でつくってはいけないものであると同時に、相手にこのような隙が生じた場合は打突の好機です。その隙を許さずに打つ機会です。油断したり剣道で言う四戒(「驚(きょう)」心の動揺・「懼(く)恐怖心」・「疑(ぎ)」疑い・「惑(わく)」迷い)などの気持ちを持ったときの「心の隙」。相手の技の起こり頭や技の尽きたときなどの「技の隙」、技を出したり、打突に失敗したときなどに体勢が崩れ、充分な残心がとれないようになった「身体の隙」。

58.切り返しの効果と留意点を各々箇条書きにて三つ以上記せ。

切り返しの効果
@気剣体一致の打ちが身に付く A無駄な力をなくし技の悪い癖が直る B正しい姿勢で打てるようになる C持久力が付き息が長く保つようになる D相手との距離などがよく分かるようになり間合いを覚える E体力が増し足腰が強くなる F気力が旺盛になる G太刀の返りがよくなる
切り返しの留意点
@大きく正しく打つ A正しい間合いをまもる B左手の拳は常に体の中心にあって右手は伸ばす C体で調子をとってはいけない D太刀の返りを利用して打つ

59.剣道の基本動作が早く上達する心がけを述べよ。

この学科問題については、それぞれの人の自分の考えが大切です。次の文章をヒントとして各自で考えて自分のことばで学科問題に臨んでください。
(ヒント)
基本動作と呼ばれるものには、姿勢・構え・目付け・竹刀の構えと納め・足さばき・素振り・掛け声・間合い・基本打ち・基本打ちの受け方・切り返し・体当たり・鍔ぜり合い・残心 などがあります。これらが早く上達するための心がけにはどのようなことがあるでしょうか。例えば、稽古を休まない。先生の教えを守り、注意されたことを忘れないようにする。初心の頃は大きく基本通りに稽古する。目先の勝ち負けにこだわらずに正しい打突を心がける。・・・・自分で考えましょう。

60.反則二回で相手に一本与える反則事項を五つ以上述べよ。
 

「剣道試合・審判規則」第17条2号〜7号
・相手に足を掛けまたは払う。
・相手を不当に場外に出す。
・試合中に場外に出る。
・自己の竹刀を落とす。
・不当な中止要請をする。
・その他、この反則に反する行為をする。

「剣道試合・審判細則」第16条
・相手に手をかけまたは抱えこむ。
・相手の竹刀を握るまたは自分の竹刀の刃部を握る。
・相手の竹刀を抱える。
・相手の肩に故意に竹刀をかける。
・倒れたとき、相手の攻撃に対応することなく、うつ伏せなどになる。
・故意に時間の空費をする。
・不当なつば(鍔)競り合いおよび打突をする。