剣道用語集
目次

あ行 か行 さ行 た行 な行
は行 ま行 や行 ら行 わ行


あ行

相打ち(あいうち) 互いに五分と五分の位で、面ならば面を同時に打突し、しかも勝ち取ること。  

相打ち 別の言い方をすると、同じ有効打突を試合や稽古で同時に打った場合は、両方とも有効打突にはしません。

相い構え(あいいがまえ) 相手と同じ構えをとること。相中段や相上段。 

合気(あいき) 双方の攻防の気が同時となり、勝敗がつかないこと。合気をはずすとは、双方の攻防の気が同時となり、勝敗がつかないときそれまでの機会の捉え方や戦法を変えて攻めること。 

相抜け(あいぬけ) お互いに争う気がなければ当たることもないということ。 

阿吽(あうん)の呼吸 相手と呼吸を合わせること。阿は呼気、吽は吸気であり、万物の資源と究極を象徴している。 

上げ小手(あげこて) 相手が上段に構えようと手元を上げた所をすかさず打つもので、普通は模擬小手を指した。上段に対する左小手を有効打突とする規定の改正により、「上げ小手」が明記されるようになった。「上げ小手」とは打突時をのぞき左拳が鳩尾より上がっている場合を言う 

足がらみ 相手に足をかけたり足をからませること。試合では反則になります。ひと昔前までは、稽古などで盛んに行われていて一つの技に考えられていました。 

足捌き(あしさばき) 歩み足送り足開き足継ぎ足の種類があります。

余す(あます) 相手の攻撃を抜きはずすことで、後方の体を捌いて抜くことを言う。 

歩み足(あゆみあし) 日常生活で行う歩行と同じ要領で交互に足を前に出す足運びで、相手との距離があり、送り足では間をつめるのに時間がかかる時に用います。 

一眼二足三胆四力(いちがんにそくさんたんしりき) 剣道修行の大事な要素をその重要度に応じて示したもの 一眼・・・相手の思考動作を見破る眼力であり洞察力である。二足・・・技の根元は足であり、足の踏み方使い方は剣道で最も重要視される。三胆・・・胆は胆力であり度胸である。ものに動ぜぬ胆力と決断力であり不動心の意味である。四力・・・力は体力ではなくて技術の力であり、わざ前のことである。剣道はすべて技術だと一般に思われているのに、技術を最後に持ってきたところにこの教えの尊さがある。 

一足一刀の間(いっそくいっとうのま) 一般には剣先が触れるか触れないかという間合い。一歩見込めば相手に打突を与え、一歩さがれば相手の打突をかわすことのできる間合い。これより近いと近間、遠いと遠間という。これは個人の体力・体型・筋力・剣道の習熟度によって一概に規定はできません。稽古を重ねる中でこの間合いをつかんでいきましょう。 

居付く(いつく) 攻防の途中に瞬間的に自由に動けない状態や、あるいは試合中に自分の気持ちが一時的に止まって瞬間的動作のできない状態をいいます。たとえば、攻められて竹刀をかたく握りしめてしまったり、体の重心が後ろに傾いて前に出られなくなったような状態も居つきといいます。 

一刀流(いっとうりゅう) 主として一本の刀を使用する流儀で、小野派一刀流や北辰一刀流などがある。 

「いなす」という言葉 相手の打突をさばいて受け流すと同時に、相手の体勢を崩すことをいいます。

(いろ) 虚実の虚のことである。相手に隙がない場合に自分の法から虚をもって相手を誘い込むことがある。これを色という。例えば、面を打つぞという色を示したため、相手がこれを防ごうとわずかに手元を上げた瞬間に小手を打つ技などがある。 

(いん) 陽に対する語で、表に対する語の裏のこと。体の右側をいう場合もある。

打ち込み稽古 あらかじめ打ち込む部位を決めておいて、元立ちの作ってくれた隙を打ち込む基本的な稽古法です。

打ち込み十徳(うちこみじゅっとく) @業激しく早くなること。A打ち強くなること。B息合い長くなること。C腕の動き自由になること。D身体軽く自在になること。E寸長の太刀自由に遣えること。F臍下納まり体崩れざること。G眼明らかになること。H打ち間明らかになること。I手の内軽く冴え出ること。

遠山の目付(えんざんのめつけ) 相手と対峙したときに、相手の竹刀や打突部など一カ所をだけを見つめたりしないで、遠い山を望むように、相手の顔を中心に体全体をおおらかに見なさいという教えです。

応じ技 相手の仕掛けてくる技を、「すりあげる」「返す」「抜く」「打ち落とす」などをして、相手の攻撃を無効にして同時にうまれた隙を打ち込む技のことです。

送り足(おくりあし) 最も基本的な足運びで、進行する方向の足から移動を開始して、ついで他方の足を移動した足に引きつける動きです。   

帯の矩(おびのかね) 相手の目を見ていると自分の心の中を見破られるような恐れのあるときは、相手の帯のあたりを見よという教えです。相手は目を見てこちらの心が読めないから果敢な攻撃はできなくなるというわけです。「脇目付」ということもあります。

表と裏(おもてとうら) 中段に構えた時、自分の竹刀の左側を自分の表、右側を自分の裏といいます。この言い方は刀を腰に差したとき(刀なので刃は上)に体に密着する方が裏で外側になる方が表になることから来ています。  

か行

返し技 打ち込んでくる相手の竹刀に応じて、自分の手首を返して応じた竹刀の反対側を打つ技です。

掛かり稽古(かかりけいこ) 相手から打たれたり、いなされたり、応じられたりすることにとらわれずに、自分の思いのまま十分な気力と体力をもって、いろいろな技を身を捨てて強く激しく打ち懸かる稽古です。元立ちはよい打ちは打たせて、無理な打ちや悪い打ちは返したり抜いたりして打たせず、正しい打ちと気力を身につけさすようにしましょう。掛かり稽古では次のような効果があります。敏捷性・持久力が養われる。手の内、手の返しがよくなる。正しい間合いを知る。打つべき機会を知る。 

かけ声 剣道におけるかけ声は、次のような効果があります。大きな声を出すことにより、自らを励まし、気勢を増し、恐怖の心をなくし、攻勢に出られる。相手に驚きや恐れを与える。無心になることができる。心気力の一致をはかれる。打突の瞬間に声を出すことによって速く、強く冴えた打ちになる。 

活人剣(かつにんけん) 敵をすくめずして勝つことを活という。新陰流ではあらゆる術理の根本とする。 

香取・鹿島(かとり・かしま) 香取神宮・鹿島神宮のことで、ともに武神を祭る神社として尊崇され、武の発祥の地とされている。 

下部の三処(かぶのさんしょ) 足の運び、特に足と腰と膝の裏側のひかがみの使い方の重要性を示した言葉である。 

構え(かまえ)…次の中段・下段・上段・脇・八相の構えを「五行の構え」という。  

中段の構え(ちゅうだんのかまえ) 「常の構え」「正眼の構え」といわれるように、攻防に最も都合がよく、理想的な構えです。剣先を相手の中心に付け、自然体の姿勢から右足を前に出し、左足をへその前に置き、握り拳ひとつぐらい出すようにします。 

下段の構え(げだんのかまえ) 「守りの構え」といわれますが、八方の敵に応じることのできる構えといわれます。相手に隙があれば直ちに攻撃に転ずることが可能な構えでなくてはなりません。中段の構えから竹刀を下げ剣先を延長線が相手の両膝の中間に付けるようにします。 

上段の構え(じょうだんのかまえ) 「火の構え」といわれる最も攻撃的な構えです。相手の技の起こり頭を一刀で制する気持ちで構えます。中段の構えから竹刀を頭上に上げ両腕が顔の前で三角形を作るようにします。左上段、右上段ともに双手と片手がある。 

脇構え(わきがまえ) 「陽の構え」といわれ、相手の出方に応じて竹刀を長くも、短くも使い分けることができる構えです。中段の構えから右足を一歩引き、手元を右脇に引き寄せ竹刀の先を水平よりやや下げ、剣先を身体にかくして相手から見えないようにし、竹刀の長さを知られないようにします。 

八相の構え(はっそうのかまえ) 「陰の構え」といわれ、自ら攻撃を仕掛けるのではなく、相手の出方によって攻撃に変わる構えです。中段の構えから左足を一歩踏み出すとともに左拳を右乳頭部の前に、右拳を口元の高さにします。 抜いた刀と鞘が八の字をなすから八相という。また、瞬時に八方の敵に対応できるから発早とかく流派もある。

上座(かみざ) 道場での上座 神棚が置かれている場合、正面の中央が「正中」と呼ばれて一番尊い位置とされています。正面両脇の席次は左が上位で右がその次になります。中国から伝わった作法で、南を向いて座って日の出る東が上位で日の入る西が下位になるわけです。玄関を入って正面に神棚がある場合は、右手が上座になります。しかし、道場の建て方によってそれぞれ、上座を決めている場合もあります。

観見の目付(かんけんのめつけ) 観とは洞察力をいい、見とは物理的に動きを捕らえる目をいいます。両者とも相手の目を見ることが大切とされています。「目は心の鏡」といわれるように目を見ればその人の心の状態がわかります。また、目を見ることによって相手の身体全体が見えるものです。「観の目強く、見の目弱く」という教えもあります。相手を見るのに「目で見るより心で見よ」という意味です。宮本武蔵は「観の目強く、見の目弱し」と言っています。 

気合い(きあい) 気合いとは、全身に気力を充満させ、少しの油断もなければ邪念もない状態で精神を集中して万全の注意をはらった状態で事に当たることをいう。気合いには声を出す(有声)と声を出さない(無声)とがあり、掛け声として外に発するものと、体の中の気力に秘めて声を出さないものがある。どちらも、敵に対して隙を与えず、相手の隙を直ちに打ち込める状態でなければならない。剣道では、気合いは大変重要で、普段は自分より強い相手に勝てることは、気合いの充実した状態があってこそである。初心のうちは、相手に威力を感じさせるくらいの力のこもった発声を心掛ける事が大切である。

気当たり(きあたり) 立ち会いにおいて、相手に活気を発し、相手の当たり、反応を見ること。

気位(きぐらい) 多年にわたる修養鍛錬、技の修練の結果、自分に備わった侵しがたい気品。 

気剣体の一致(きけんたいのいっち) 打突の基準となるもので、「気」とは打突の意志とそれを表現する充実した気勢・掛け声、「剣」とは正しい竹刀操作、「体」とは体さばきと体勢・踏み込む足と腰の入った姿勢をいう。これらが同時に満たされていることが有効打突の条件になります。ですから心気力の一致とは意味が違います。 

機前(きぜん) 相手の一念が発する以前に機先を制して、相手の気勢をくじくこと。

気づくり 立ち会いの前の段階で、気持ちを整えていくことをいいます。武道史上の名勝負といわれるものは、たいてい立ち会い以前に勝負がついていたといわれています。

技癖(ぎへき) 昔から人には無くて七癖と言われるように、各人それぞれ癖のあるものです。剣道でも各人に技術上の大小の悪い癖があるものです。これを技癖といいます。師から正しい技術を示されても、個性の悪い表れとして、技癖が生まれてくるのであるが、これはその技術を正しく理解し、体得していないためです。技癖は上達を妨げる大きな原因となるもので、技癖を指摘され正しい技術を示されたときは、最も大切な事として技癖を直すように努力しなければなりません。

切り返し(打ち返しともいいます) 正面打ち→体当たり→連続左右面→正面打ちを連続して通常2回繰り返す剣道の総合的稽古法です。剣道の準備運動などとして一般に行われていますが、れっきとした独立した稽古法です。剣道の準備運動が切り返しだと単純に考えないでください。

切り返し五則きりかえしごそく) @大きく正しく A正しい間合いをまもる B左手の拳は常に体の中心にあって右手は伸ばす C体で調子をとってはいけない D太刀の返りを利用して打つ

切り返し八徳(きりかえしはっとく) @気剣体一致の打ちになる A無駄な力をなくし技の悪い癖を直す B正しい姿勢がとれる C耐久力ができ気息が長くなる D目が明るく間合いを覚える E体力が増進し足腰を強くする F気力が旺盛になる G太刀の返りがよくなる 

虚実(きょじつ) 虚とは相手の守りの弱い状態(守りの薄い)のところ、実とは強いと状態(十分守っている)のところをいいます。実を避けて虚を打てという教えです。相手の虚実はこちらからの攻め方(誘い方)によっても変化します。その虚実の変わり目を打つことが大切です。

組み討ち(くみうち) 今日の剣道では試合規則の禁止行為であるが、以前は相手から竹刀を落とされたりつばぜり合いなどの時に、足がらみや組み討ちを行った。

組太刀(くみたち) 相手に勝つための各種の方法を師が弟子に教育するためにその手順を定めて練習させるために組まれた形。

稽古(けいこ) 古(いにしえ)を稽(かんが)えるとう意味です。日本古来の伝統的な武道や芸道の練習方法をいいます。 

剣心一如(けんしんいちにょ)  剣は人なり、剣は心なりといわれるように剣は心によって動くものであり、剣と心とは一元的のものである。したがって、正しい剣の修行をすれば正しい心を磨く結果になる。

剣道の理念(けんどうのりねん) 「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である」 

剣の五徳(けんのごとく)  正義、廉恥、勇武、礼節、謙譲(けんじょう)  

剣道形(けんどうがた) 剣道形は各流派のすぐれた技を集め、剣道の技術の中において最も基本的な打突法を組み立てたものです。礼式、構え、間合い、攻め、打突、気合い、残心など、すべての術技ともいえるもので、極めて高度なものであるので初心者はもちろんのこと、上級者も常に形の稽古の修練をすることが大切です。次のようなことが形の効果としてあげられます。正しい姿勢ができ、落ち着いた態度が身に付く。目が明らかになり、相手の動きや気持ちを観察できる。悪い癖が直り、太刀筋が正しくなる。気合いが錬れて気迫が充実する。自分の動作が機敏、軽捷になる。適切な間合いを知ることができる。打突が確実となる。数多く修練することによって、気品や風格ができ、気位が高くなる。 

剣道修練の心構え(けんどうしゅぎょうのこころがまえ) 「剣道を正しく真剣に学び、心身を錬磨して、旺盛なる気力を養い、剣道の特性を通じて、礼節を尊び、信義を重んじ、誠を尽くして、常に自己の修養に努め、もって、国家社会を愛して、広く人類の平和繁栄に寄与せんとするものである」

剣道修行の目的 剣道は剣の理法の修練による人間形成の道であって、その目的のために行われれば真剣でも木刀でも、あるいは棒きれであっても剣道といえるでしょう。そして、その理法を研究し、修行鍛錬していくところに剣道の真価が認められ、心身を鍛練することによって偉大な精神、頑強なる身体、崇高なる人格などを養うことが剣道の修行の目的と言えるでしょう。

剣道の理念 「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である」

懸待一致(けんたいいっち) 攻める(懸かる)ことばかりに専念しても、備える(待つ)ことばかりに専念しても隙が生じてしまいます。だから、旺盛な気力とともに、懸かるところに待つ心、待つところに懸かる心がなければならないということです。「懸中待(けんちゅうたい)」「待中懸」ともいいます。簡単に言えば「攻防一致」といってもいいでしょう。 

剣は心なり(けんはこころなり) 「剣は人なり。心正しからざれば剣又正しからず。剣を学ばんと欲すれば、先づ心より学ぶべし。」らしいですが、一般には「剣は心なり。心正しからざれば剣又正しからず。剣を学ばんと欲すれば、先づ心を正すべし。」のほうがよく使われています。これは幕末の剣士 島田虎之助の言葉です。島田虎之助は九州豊前(大分県)の中津藩士で直心影流の男谷精一郎の弟子で浅草の新堀に道場を開いていました。兄弟弟子には榊原健吉がいます。また、虎之助の弟子には幕末に活躍した勝海舟が有名です。

剣を踏む(けんをふむ) 宮本武蔵の「五輪の書」に出てくる言葉で、相手の打ち出す剣を足で踏みつける心持ちで機先を制すること。この場合、気で制し、体で制し、剣で制して相手の剣先を制することが肝要である。 

合議(ごうぎ) 審判員が試合者の反則を発見したときや、疑義が生じたときにお互いに相談すること。

交剣知愛(こうけんちあい) 剣を交えて愛しむを知るという意味。剣道は単に竹の棒で相互に打ち合うものではなく、一度稽古した人には是非もう一度稽古をお願いしたいと思われるような剣道をするように心掛けよという意味。

狐疑心(こぎしん) 狐は疑い深い動物で、狩人に追われたときに逃げ場に困り道に迷っている間に脇に回られて狩人に撃たれてしまうことがあります。このことから、狐のように疑い深く進退の決心がつかないことをいい、剣道における戒めのひとつです。 

五行の構え(ごぎょうのかまえ)

さ行

冴え(さえ) 「技に冴えがある」「冴えのある打ち」などといわれますが、冴えた動作とは、合理的で無駄のない状態をいい、科学的にエネルギーが最も有効に使われた動作を感覚的に表現した言葉です。したがって、無駄な打ちをだしたり無駄な所作が多ければ決して冴えているとはいえません。構えているときは力を抜き、打突の瞬間に必要な筋肉を緊張させ、気剣体の一致した動作が必要です。 

提刀の姿勢(さげとうのしせい) 腕を伸ばして、刀や木刀・竹刀を左手に持ち、立礼をするときの姿勢。

刺し面(さしめん) 左手にて竹刀の柄頭を繰り出し、右手で竹刀を相手の頭上に乗せるようにして打つ技である。 

三角矩の構え(さんかくくのかまえ) 中段の構えのポイントを教えたもので、眼、腹、剣先の三角形の矩をはずさないように構えることをいいます。この教えは山岡鉄舟が考え出したものです。 

三功一致(さんこういっち) 相手を攻める技を出すための三つの道具(切先、身体、気合)が一致する事が大切で、錬磨によってのみ得られる。 

三殺法(さんさっぽう) 相手の「気を殺す」、「竹刀・太刀を殺す」、「技を殺す」ことをいいます。気を殺すとは、充実した気力を持って相手の気を崩して攻めることをいいます。竹刀を殺すとは、相手の竹刀を抑えたり払ったり、叩いたりして竹刀の自由に使わせないことをいいます。技を殺すとは、相手の打ちに対して先を取って乗ったりはじいたりして、相手に攻撃の機会を与えないことをいいます。千葉周作はこれを「三つの挫き」と表現しています。 

残心(ざんしん) 相手を打突した後も気持ちをゆるめることなく、少しも油断もなく、その後の変化に直ちに応じられるような心構えをいいます。一般的には打突の後に中段の構えにもっどて相手に正対することになります。 

三磨の位(さんまのくらい) 剣道には「習い」「稽古」「工夫」の三つの要素が大事であり、これを一体的に磨くことをいう。 

直心是道場(じきしんこれどうじょう) 純一無雑な素直な心で剣道を学び、剣道以外の日常生活の様々な出来事も剣道ならどうするかと考え、少しの間も剣道から離れることなく修行する事。 

四戒(しかい) 剣道の四戒は驚(きょう)・懼(く)・疑(ぎ)・惑(わく)のことをいい、剣道の四病ともいう。「驚」とは突然予期しないことが起こって心が動揺してしまうことです。心身に混乱を起こして正確な判断ができなくなります。「懼」は恐怖心が起こることです。心身が硬直して十分な活動ができなくなります。「疑」は疑いを持ち注意力が心の中で停滞してしまうことです。「惑」とは惑いが起きて、敏速な判断ができなくなり、動作も緩慢になってしまいます。このような心の動きが、剣道において平静な気持ちが乱れて、呼吸も混乱させてしまいます。この四つの心の病気を起こさないように修行する必要があります。

しかけ技 相手が打突の動作を起こす前にこちらから相手の中心を攻めたり、竹刀で押さえて隙をつくらせ、または、相手の隙を発見すると同時に打ち込んでゆく技です。

地稽古(じげいこ) お互いに気力を充実させて修得した技を積極的に出し、錬磨しあう総合的な稽古法です。 

止心(ししん) 注意が一つのものに停まってしまうことをいい、「居つく」ともいって、相手から打突されやすい心の状態です。 

撓競技(しないきょうぎ) 戦後GHQにより剣道は禁止された。笹森順造などを中心にフェンシングに似せたスポーツ形式の競技を考案し、GHQの許可を得て昭和25年に全日本撓競技連盟を組織したもの。昭和27年に全日本剣道連盟が創立されたが昭和30年代の始めの頃まで行われていた。

(しのぎ) 刀の峯(みね)・棟(むね)から刃にむかってゆく面で一段高くなっている稜線をいう。峯も棟も同じ場所をさし、刃の反対側です。(時代劇で「みね打ち」などという言葉が使われます。刃の反対側で打つことです。)

事理一致(じりいっち) 理業一致をおなじ

守破離(しゅはり) 修練の過程を示した言葉。守は師の教えを守りひたすら基本を身につけること。破は今までの教えを基礎として自分の個性を活かし、自分自身のものを創造する段階。離は最初の教えから外れるのではなく、それを中核にして自由自在に行動し、教えを乗り越える段階をいいます。 

心気力一致(しんきりょくいっち) 「心」とは、観察力(敵の心の働きを観る力、いわゆる心眼)・不動心(敵の動きにまどわされない心のすわり、平常心)、「気」とは集中力(精神エネルギーを集中させる力)・制圧力(敵を気で圧倒し、その心身の動きを制圧する力)、「力」とは、瞬発力(敵の変化に対応する業の力)・智力(戦いを有利に導くためのかけひき) 

(すき)  四病といわれる驚(きょう)・懼(く)または恐(きょう)・疑(ぎ)・惑(わく)の生じた心の隙と剣先が相手の中心から離れたり、手元があがる、または下がるなどして生じた動作の隙や構えの隙がある。

捨て身(すてみ) 身を捨てたときこそ、はじめて浮かび上がってくる機会があり、相手の隙を見るやいなや、躊躇することなく身を捨てて打ち込んでいくことにより、勝ちを得ることができます。

素振り(すぶり) 竹刀や木刀を持ち、上下、斜めなどに振る動作で、大きく正確に行うことが大切です。竹刀操作や刃筋を知り、打突の基礎を体得するために行います。 

正眼の構え(せいがんのかまえ) 中段の構えの一つだが、剣先の付ける場所によって、あるいは昔の流派によっていくつかの言い方がある。 正眼…剣先を相手ののどに付ける。 晴眼…剣先を相手の目と目の間につける。 青眼…剣先を相手の左目に付ける。 星眼…剣先を相手の顔面の中心に付ける。 臍眼…剣先を相手の臍に付ける。一番低い中段の構えになる。

静中の動(せいちゅうのどう) 静かに相手を観察する中にも心が停滞することなく、機熟せば直ちに激しい動きに転じることができる心の準備が大切という教え。動中の静の反意。

石火の機(せっかのき) 沢庵和尚の著した不動智神妙録の中で述べられていること。火打ち石は打った瞬間に火花が発するものであり、後から発するものではない。そのように打突の機には間も隙間もない。心の留まるべき間のないことをいう。心が留まるは我が心を人にとられるもので心を留めてはならないという教え。

殺人刀(せつにんとう) 柳生石舟斎宗厳の工夫公案書に「当流に構える太刀を皆殺人刀と言う。構えのなき所をいずれも皆活人剣と言う。また構える太刀を残らず裁断して除け、なき所を用いるので、其の生ずるにより活人剣と言う。」とあり、敵をすくめて勝とうとすることを殺としている。

(せん) 先には次の三つの先があります。

先の先(先々の先):相手の思惑を素早く察知して、相手が動作を起こす前に打つことをいう。対の先(先・先前の先):相手の思惑までは察知できないが、打突してくる起こり頭をとらえたり、相手の技が功を奏する前に、すり上げたり返したりして勝ちを制することを言います。後の先(待の先・先後の先):相手に「先」を仕掛けられて、それに応じる場合をいいます。相手の打ってくる技をかわしたり、打ち落としたりして相手の気持ちの萎えたところや、体の崩れたところを打つことをいいます。

相殺(そうさい) 貸し借り・損得など相反するものを差し引きしてゼロにすること。試合で双方が同時に2回の反則を犯して双方が負けとなる場合に2回目の反則を反則として数えないことです。

蹲踞(そんきょ) 剣道で蹲踞という場合はやや右足を前につま先立ちで両方の膝を左右に開いて折り曲げ、上体を正した中腰の右自然体の体勢をいう。本来は礼法の一つです。立礼・座礼・蹲踞の礼があり蹲踞の礼は、屋外などで目上の人に礼をするときに立礼では失礼だが座礼もできないような場合に行われていました。古流の中には蹲踞の姿勢で礼をしてから刀をつかむ流派もありますが、剣道では蹲踞の姿勢で竹刀を構えるので、いろいろな意見があります。

た行

体当たり(たいあたり) 相手の気をくじき、体勢をくじき、相手の構えが崩れたところをすかさず打つために行うものであって、相手を倒すことのみを考えてするものではない。したがって、体当たりは踏み込んだ勢いを下腹部に集中し、竹刀の柄と柄を交差させるようにして腰で当たることが肝心で、腕で押したり、頭から突っ込むのは体当たりとは言いいません。

大強速軽(だいきょうそくけい) 初心者指導の要諦は「大きく正しく」ということで大強速軽はその上達への過程を教えたものである。最初は大きく振りかっぶって強く正しく打つ。そのうちに技もだんだん速くなり、無駄な力がなくなり次第に軽妙になり、冴えのある立派な剣道になる。 

打突の好機(だとつのこうき) 打突すべき次のような機会を指します。1)起こり頭:出頭、出鼻ともいい動作を起こそうとする瞬間。2)受け止めたところ:相手が自分の打突を受け止めた瞬間。3)居着いたところ:心身の活動がにぶり、動きが一時停滞した瞬間。4)退くところ:相手が攻めに屈して退こうとした瞬間。5)技の尽きたところ:相手の技が一時中断し、体勢を整えようとする瞬間。特に1)2)3)を「三つの許さぬ所」といいます。

ため 技を発する場合、心においても体においても余裕を持ち、気の充実をはかり臍下丹田に気を張り巡らしてから技を出すことが肝心である。気の充実のないところから出した技は、相手にその起こり頭を押さえられ、相手の誘いに簡単に乗ってしまうことにもなるので稽古で十分練る必要がある。

丹田(たんでん) 丹田とは臍下丹田といい、へそと恥骨の腹中にあり、東洋の身体論で、心身の活力の源である気の集まる所と言われる場所で、そこに力を入れることによって、腹のすわった姿勢が保たれ、心の動揺も抑えられるという教え。 

智仁勇(ちじんゆう) 何が正しいかを識る意の「智」、相手を理解する、相手の立場になってものが考えられる慈愛の心を「仁」、そして勇気をふるって打ち込む「勇」、この智・仁・勇が渾然一体となったものが剣の道である。 

対の先(ついのせん) 相手が先を取って動作を起こすと同時に、こちらも先に動作を起こすことを言う。

中段の構え:「常の構え」「正眼の構え」といわれるように、攻防に最も都合がよく、理想的な構えです。剣先を相手の中心に付け、自然体の姿勢から右足を前に出し、左足をへその前に置き、握り拳ひとつぐらい出すようにします。 

継ぎ足(つぎあし) 後ろ足を前足に引きつけ、前足から前進する足運びで、相手との距離が遠くて打突が届かないとき、間を盗んで大きく踏み出すために用います。

付ける(つける) 付くようにする。剣先をある方向に向け、相手の動きを制したり、攻撃に対応するための準備体勢を整えること。

鍔ぜり合い(つばぜりあい) 相手に最も接近した間合いで、両者とも竹刀をやや右斜めに開き、鍔(右の拳)が互いに触れあっている状態をいいます。

手の内(てのうち) 竹刀の握りと教える場合がありますが、手の内とは竹刀を操作する掌中の作用であり、両手首・両手の指を最も効率的に使う動きのことをいいます。手の裡(てのうち)とも書きます。具体的には@柄を持つ左右の手の持ち方。A左右の手の力の入れ方。B打突の際の両手の力の緊張状態とその釣り合い。C打突後の力のゆるめ方。これらを総合的に手の内とも言います。 

動中の静(どうちゅうのせい) 激しい攻防の中でも冷静に相手の状況を判断することが大切であるという教え。 

な行

中墨をとる(なかずみをとる) 中墨とは大工用語で、墨縄でつくる中央線のことで、剣道では相手の中心を意味する。つまり、自分の剣先が相手の中心から外さないようにするという意味である。相手に打たれるときは必ず剣先が左右どちらかにそれていて、構えに隙のあるときです。どんなときにも剣先を相手の中心から外さないようにしていれば、打たれないし、打たれても立派な稽古ができます。 

は行

刃筋(はすじ) 刃物でものを切るとき、加える力の方向と刃の方向が一致することが大切である。打突の際には常にこの刃筋を正しく操刀する事が大切である。これを「刃筋が立つ」という。この反対で平打ちなどは「刃筋が立たない」「刃筋がつぶれる」などといいます。

八相の構え(はっそうのかまえ):「陰の構え」といわれ、自ら攻撃を仕掛けるのではなく、相手の出方によって攻撃に変わる構えです。中段の構えから左足を一歩踏み出すとともに刃を相手に向けて左拳を鳩尾(みぞおち)の前に、右拳を右肩の前で鍔が口元の高さにくるようにします。

ひかがみ 膝の裏側の部分をさすことば。正しい足さばきから踏み込みには、左足のひかがみの張り具合や余裕の持たせ方、使い方が大切です。

引き上げ  打突の後、充分な身構えや心構えがなく相手から引き下がって縁を切ること。

百練自得(ひゃくれんじとく) 芸事はすべてを見聞きして身につけるものではなく、失敗や成功を重ねて多くの経験の後に身寿から自ら身に付くものであり、不断の努力が大切であるという古人の教え。

平打ち(ひらうち) 竹刀の左または右側で打つ刃筋の正しくない打ち方のこと。

開き足(ひらきあし) 相手の打突を、身体を左右にさばいてかわすのに用います。

二つの目付(ふたつのめつけ) 目付は相手の目を中心に見るのですが、特に拳と剣先の二つに注意をしなさいと言う教えです。しかし、初心者がこのような特定の場所に目を付けることは「止心」につながるので、教えるべきではありません。

踏み込み足(ふみこみあし) 相手の隙をとらえて鋭く打突するときに使う足捌き。左足で蹴るように踏み切り、右足を上げた後で足の裏全体で床を踏みつける。さらに左足を右足に素早く引きつけ、前進する姿勢がとどまることなくなめらかに送り足をおこなう、という一連の動作を言う。

平常心・不動心(へいじょうしん・ふどうしん) 普段の心の状態を平常心といい、どんな状態でも平常心を持ち続ける、心が動かない状態を不動心といいます。どんなときでも自分を見失わない心は、実力を発揮するために大切です。 

放心(ほうしん) ふつう「放心」というと、心がぼーっとしてまとまりのない状態をいいますが、剣道でいう「放心」とは、どんなことにも対処できるように、心をとき放ち、何ものにもとらわれない心をいいます。 

ま行

間と間合い(まとまあい) 間と間合いは同じ意味で使う場合もありますが、厳密に区別すれば次の通りです。「間」とは時間的な距離をさし、「間拍子」や「拍子の間」などに使われている。「間合い」とは空間的な距離で相手と自分との距離をさします。「我より近く、相手より遠い」と言われるのが間合いです。しかし、間合いを略して間ということがあります。

枕のおさえ(まくらのおさえ) 現代用語で言えば出ばな打ちのことです。人が立ち上がれば強力な力を発揮しますが、立ち上がろうとしている、まさに枕から離れようとしている瞬間は少しの力で押さえることができます。小の力で大の力を押さえられるということです。面のメ、小手のコの字を打てという教えもあります。

見取り稽古(みとりけいこ) ばくぜんと見学するのではなく、他人の稽古や練習態度、得意技などを研究しながら、よい点は取り入れ自分の剣道に役立てて行くように見学することを言います。自分が防具を付けて稽古をしているときでも、常に見取り稽古を心掛けなければいけません。

無心(むしん) 何かをしようとする心の無いこと。

無念無想(むねんむそう) よけいな事を何も考えない様子。

明鏡止水(めいきょうしすい) 自分の心は明らかな鏡で、止まる水のように澄み切っていれば、水面が夜空の月を写すように相手の隙が自然に自分の心に映るということです。 

目付(めつけ) 剣道では「一眼二足三胆四力(いちがんにそくさんたんしりき)」ということばがあります。「眼」は洞察力、「足」は迅速な足さばき、「胆」は度胸、「力」は単に物理的な力ではなく、一、二、三、の要素を含む力をいい、修行の重要度を教えた言葉です。遠山の目付・観見の目付も参考にしましょう。

黙想(もくそう) 明治30年頃から始められた形式である。剣道で行う黙想は禅僧が行う結跏趺坐(けっかふざ)をして法界定印(ほうかいていいん)をとる黙想の作法とは異なり、正座のまま法界定印のみをとる黙想を行うものである。

物打ち(ものうち) 刀身の中で、最も切れる部分のことで、切っ先より10センチほどのところのこと。竹刀に置き換えた場合は剣先より中結いまでの間のこと。

や行

有効打突(ゆうこうだとつ) 充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心のあるものをいう。

有構無構(ゆうこうむこう) 構えは、あってないのと同じで心の闘いが最終的には勝敗を決定するものだという意味です。 

ら行

礼の意味(れいのいみ) 字の意味は神を祭る際に行う儀礼、ひいて、人の守るべき秩序を表します。剣道における「礼」の意味を、旧字体が示すように、その人の豊かさを表す作法の意味に取ると、剣道の理念にある人間形成そのものに当たり、礼を身につけることが最も大切ということです。

理業一致(りぎょういっち) 理は理合いであり業は技である。剣道を学ぶには理に偏ってはいけないし、技ばかりに片寄ってもよくない。理と技とを一元的に修練するのが理業一致である。 

わ行

脇構え:「陽の構え」といわれ、相手の出方に応じて竹刀を長くも、短くも使い分けることができる構えです。中段の構えから右足を一歩引き、手元を右脇に引き寄せ竹刀の先を水平よりやや下げ、相手に竹刀の長さを知られないようにします。           

脇目付(わきめつけ) 帯の矩を参照